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イルカが愛を確かめにくる、青い海の底の日常生活

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「ジョン・レノンに恋して」 シンシア・レノン著

「ジョン・レノンに恋して」 シンシア・レノン著_a0031041_23163562.jpgジョン・レノンの最初の妻シンシア・レノンが、半生を赤裸々に綴った本。
まずビックリしたのが、ジョンとのこととは全然関係ないんだけど、リンゴ・スターの最初の妻モーリーンが、離婚後、妻と別居中のジョージ・ハリソンと短い間つきあってたという記述。ジョージは自分の最初の妻パティが(みんな‘最初の’と書かなくてはいけないので大変)、大親友のエリック・クラプトンと結婚し、しかも結婚式にまで出席したという太っ腹な男なのですが、リンゴも大きい男だったんだわ。というか、この近親相姦図は一体(汗) 改めて、スターというものは思ったより交際範囲が狭いものなんだと思う。

今までビートルズ関係の本を山のように読んだけど、なかには過激さだけを売りにした、信憑性がないことはもちろん、まともにビートルズの曲も聴いたことがないんじゃないかと疑いたくなるようなひどいものもあった。だから私が好きなのは、純粋にビートルズのファンの目線から、4人の音楽や歴史を語ったものだったりするんだけど、やはりこの手の当事者から書かれたものは別な面白さがある。
とは言ってもこれはシンシア・レノンという人の主観であるということも忘れてはならない。だからビートルズの音楽性や仕事ぶりのようなものはほとんど無知と言っても良いと思う。妻という立場から語られる、‘姑’ミミの残酷さ、意地の悪さ。それは今までの「厳格なミミおばさん」のイメージをはるかに凌ぐものだった。
私がビートルズを聴き始めた頃、変だと思われるかもしれないけど、ジョン・レノンの生い立ちや性格に、奇妙に共感するものを覚えた。だから私はジョンが嫌いだった。今の私はジョンに似てるとは思わないし、ジョンのことも好きだけど、やはり今回も、ジョンの少年時代の面影に、自分の昔を重ねてしまった。
こんなこと書くのはイヤだけど、私の母はミミとそっくりなのだ。いや、そっくり‘だった’と書くべきか。ジョンがミミおばさんにされた仕打ち、シンシアがされた仕打ちを読んでると、やっぱり、心の中に暗雲がムクムクと顔を出す。どれも身に覚えがある。自分がされたことが書かれているような追憶感。ミミがジョンの人格形成に与えた影響は大きなものだと思うし、だからやっぱり私はあんなにジョンが嫌いだったのだろう。

意外にも、シンシアの記述にはポール・マッカートニーに関するものが少ない。ビートルズが有名になるまでのジョンとポールの親密さは書かれているけど、有名になってからは、リンゴやジョージと休暇を過ごしたと書いてるものが圧倒的に多い気がする。二人の関係の視点についてはまた別の話しなんだろうけど、ジョンにとってポールとは、やはり遊び友達というよりは尊敬や畏怖、ライバル心の方が強かったのかもしれない。
そして、ジョンと離婚したあと、ジョンの逆鱗に触れることを恐れて誰もがシンシアに背を向けたなか、ポールだけが一輪の赤いバラと「ヘイ・ジュード」の歌詞を携えて会いに来たというエピソードに、んもーなんて優しくて強い男なんだ!! と感動。この話しだけでも、ポールのジョンに対するスタンスが表れてる気がする。

離婚してからのオノ・ヨーコとの関係、そして本人たちにとっては死活問題かもしれないけど、離婚慰謝料や、ジョンが死んだ後の遺産問題については、読んでてもう本当に疲れた。こういうのってどこにでも転がってる話なのかもしれないけど、やっぱり耳を塞ぎたくなるようなことだ。
シンシアは誰かを一方的に非難しようとはせず、なるべく客観的に書こうとしてはいる。だけどシンシアの視点から、ジョンとヨーコがシンシアと息子ジュリアンにした仕打ち、ジョンの死後のヨーコの仕打ちなどを読んでると、「ジョンとヨーコの伝説」なんてどうかな、という気分になる。まあこれは大抵の‘伝説’が、実際はそんなものなんだろうけど。

高らかに愛と平和を歌う一人の天才ジョン・レノン、だけど両刃の剣のように、周囲の者を傷つけずにはいられなかったジョン・レノンの姿が、ここには記されている。
by bigblue909 | 2007-08-14 23:21 | 読書感想
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ビッグブルーの本気な無駄話。


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