イルカが愛を確かめにくる、青い海の底の日常生活

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「ベルサイユのばら」 池田理代子作

a0031041_1591056.jpgいまさらなんだけど、ベルサイユのばら。なぜかと言えば、ちょっと前にアントニア・フレイザーの「マリー・アントワネット」という本を読んだんだけど、これが面白かったから。‘アントワネットを一人の女性として好意的に描き直す’というのが主題。ソフィア・コッポラの映画「マリー・アントワネット」の中で印象的だったシーン、例えばフランスに嫁ぐ時にオーストリアの国境まで来てパグ犬と別れる時に泣きじゃくり、「約束よ、後で必ず送ってよ」とお願いするのとか、大勢が見守る中、毎朝下着やドレスがもどかしいぐらいに侍女から順繰りに手渡され、寒さに震えながら素っ裸で待っていなければならなかったり、こういう細々したシーンは史実に基づいたものだったようだ。特にこのフレイザーの本にだけ書かれたのではなく、多分フランス王朝マニア?には常識的なものなんだと思う。

というわけで、本を読み終わった後で、「いまベルばらを読んだらどれだけ面白いだろう!」と興奮し、早速オークションで入手したわけ。私はベルばら世代からは外れていて、マンガも読んだことがなかったし、テレビでアニメをやっていたのは覚えてるけど、小さな子供だった私にはまだ理解できる内容ではなく、バラは♪ バラは♪ の主題歌と、マリー・アントワネットのギロチンシーンがものすごく衝撃的だったことしか覚えてない。それよりは「キャンディ・キャンディ」の方がずっと理解しやすく可愛くて、今でも夢いっぱいの思い出がたくさん残っていて、やっぱり私はキャンディ世代だと思う。
それから二十歳ぐらいの時に初めて歯医者の待合室でベルばらのマンガを手にとったけど、いつ突然終わるかわからない歯医者通いなので、すごい勢いで読んだのであまり面白かったイメージがない。ちなみにこの時も強く印象に残ったのは、ルイ15世が腐って死ぬシーンと、アランの妹の腐乱死体のシーン。一体どういう記憶能力なんだ。

で、今回初めてきちんと読んでみて、なるほど! と唸る。うーん、これはやっぱり少女漫画の傑作と呼ばれるのも納得。付け焼き刀の私の知識でもっても、史実の中にオスカルという虚像をうまく縫いこんである。意外だったのは、宝塚のお家芸となっているあの濃いぃねちっこそうなオスカルとアンドレの悲恋が、マンガでは結構あっさりアンドレが死んだり、オスカルも「もうすぐ死ぬぞおらぁ~~~」という作者のしつこいまでの予告がされていたおかげで、やっぱりフツーに読めたこと。私はむしろそこよりも、オスカルがフランス衛兵隊を熱血教師さながら育て上げ、「隊長!」「お前達!」とやるシーンの方が泣けた(スポ根好き)。
でもやっぱりこのマンガの主役は「フランス」そのものでしょう。フレイザーの本では「好意的に」と初めに書いてあったとおり、アントワネットを弁護する文章が多かったけど、池田理代子の描くアントワネットの方がずっと公平に思える。
「あなたたちは私からなにもかもを奪った! それなのにこの子まで奪おうと言うのですか?」
「そうともわしらにも息子がいた。わしらが息子に飲ませてやるミルクもなく栄養失調で死んでいくのをただ見ていることしかできなかった時・・・・・・・あんたは贅沢な宝石を身につけ笑っていた・・・」

牢獄で息子のルイ17世と引き離されそうになった時のやりとりだ。そう、いくらアントワネットがフランス革命のスケープゴートだったとしても、「知らない」というのも大きな罪で、アントワネットは市民がどれだけ貧しかったか、やっぱり本当には理解できなかったんだと思う。

そして、マンガの中でポリニャック夫人については描かれているけど、実際はアントワネットにはもう一人、ランバル公妃というお気に入りだった女性がいた。うまく立ち回ってアントワネットからお金を巻き上げ、革命が始まった途端真っ先に逃げ出したポリニャック夫人とは違い、ランバル公妃は王妃の寵愛がなくなっても、再び自分の元に戻ってきた時も、変わらずアントワネットを慕い、なにも求めず、最後まで忠誠を誓って死刑になってしまう。
最後は牢獄を出た途端、憤った市民たちに殴られレイプされ、文字通り八つ裂きにされる。さらに衝撃的なのは、槍の先にランバル公妃の生首を刺し、嘆き悲しむアントワネットに見せようと、塔の窓に掲げたそうだ。今とは比べ物にならないほど娯楽も情報も限られた時代、伝い漏れてくる貴族達の豪華な暮らしぶりと、面白おかしく書かれた王妃の酒池肉林の捏造ゴシップを、市民がどれほど頭から信じて憎悪したかというのも想像に難くなく、ろくに食べることができなかったという同情を差し引いても、その信じられないほどの残忍さに嫌悪感を感じてしまう。
イギリスの「マダム・タッソーの蝋人形館」には、ギロチンにかけられた後のアントワネットの生首を、マダム・タッソーが型をとって作ったデスマスクがあるそうで、画像検索して見ちゃった(お前の方が悪趣味だろってか)。

というわけで、やっぱり歴史って面白い。私、イギリス王朝の本を読むのも好きだけど、こちらは日本ではマンガになってはいないよう? なんにしても、またいろいろ探して読んでみようと思う。セット購入すれば単価が安くなるからと一緒に落札した「オルフェウスの窓」もいま読んでるけど、こちらも革命のお話のようで、どんどん面白くなってきたところ。
それにしてもあの↑絵。やっぱりああいう絵じゃないと、少女漫画を読んだ気がしないのは、まさに幼い頃の刷り込みかも。金髪、目に星、ドレスに大富豪とこなくちゃ少女漫画じゃない!
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by bigblue909 | 2009-07-26 15:09 | マンガ
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ビッグブルーの本気な無駄話。


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