人気ブログランキング | 話題のタグを見る

イルカが愛を確かめにくる、青い海の底の日常生活

bigblue909.exblog.jp ブログトップ

2013年8月劇場鑑賞映画

映画ミニコラム⑧
先月の「殺人の告白」で、「おばちゃんがうるさいけど始まる前だから文句も言えない」と書いた。けど先日、まさにそんな事で上映前におばちゃんたちが大喧嘩を始めて。発端はお菓子の袋をガサガサ、携帯をピカピカさせてたおばちゃんに「映画が始まったらやめてくださいね」と言ったことらしい。私も始まるまでに音の出ることは全部済ませようと、バッグをごそごそティッシュをカサカサ鼻をちんスマホをギラギラさせるし、未遂のことに対して釘を刺されるのがどれだけ腹が立つかは、子供時代を親と過ごした人ならばわかると思うので、ここまでは少し同情する。
けど「映画観たことない人みたいに言わんといて!」と激高するおばちゃんに、注意した方が「そんな音がするお菓子を食べる人いないでしょう」と言うのももっともな話で、映画ファンとしては断然同意見。けどやはり映画が始まるまで少し様子を見るべきだったのはいかんともしがたい。
そんなどっちもどっちな状況だけど、菓子おばちゃんがとにかく怒鳴るので、数人しかいない広い劇場で前方に一人座る私にも経緯がわかるほど丸聞こえ。怒鳴り声を聞くだけで気分が悪いし、何よりこのまま映画が始まったらたまらないので、立ち上がって「係員を呼ぶけど良いですか?」と言うと、「呼んで来て! この人うるさいわ」と菓子おばちゃん。係員に事情を話して戻るとすっかりおとなしくなっていて、男性係員二名に諭されるのに小さく反論して終わった。他の無関係な観客が私と同じ列に移動していて、変なことに首を突っ込んでしまったんじゃないかと思ってた私は内心ホッとした。
でもおばちゃんはその後嫌がらせでわざとくちゃくちゃバリバリがさがさと一袋30分ぐらいかけて食べきってた。係員が数回問題がないか確認しに来てたけど、遠いので音までは気づかなかったみたい。これだけとっても、結局おばちゃんのモラルの低さが伺い知れる。
こういうのってどうなんだろう? 実際映画が始まるまでは・・・とは言っても、私も過去に上映前に後ろから椅子をガンガン蹴られたり、花粉の時期に鼻をグズグズして一向にかむ気はない人の隣りになったりしてさっさと移動したことがある。始まる前だからこそ蹴るのやめてくださいとか、ティッシュ差し出したろかとか本気で思うのをグッとこらえて、ベストポジションから移動せざるを得ないのだ。うーん、難しい。

嘆きのピエタ ★★★★★
2013年8月劇場鑑賞映画_a0031041_1622652.jpgキム・ギドク監督の4年ぶりの新作、そして2012年のヴェネツィア国際映画祭金獅子賞作品、やっと神戸でも公開。当時は「ザ・マスター」のポール・トーマス・アンダーソン監督とフィリップ・シーモア・ホフマンが受賞したから作品賞から外されて漁夫の利を得たとか話題になってたけど、私はPTAがものすごく苦手だし、予告を見ても面白そうな要素ゼロだったのでスルーしてしまった。個人的には絶対このピエタの方が良いに違いないと確信してるんだけど。
とは言ってもギドク監督なので、後味スッキリとか何度でも観たい!という気分にはなるはずもなく。だけど毎回ずっしりと、2時間近くを映画を観るために費やしたのに見合うものを提供してくれる。ピエタとは十字架からおろしたキリストを抱くマリア像とあるんだけど、ギドク作品には寺が出てくることが多いし(この映画にも出てきたね)、内容的にも仏教的な側面が多いと思うんだけどどうだろう。
ねたばれ→韓国語では身体障害者を「ピョンシン<病身>」と言うんだけど、これは日本語に直訳できる類のものではなく、そのままずばり差別用語兼罵り言葉として使う。私もfacebookなどで普通の韓国人が、政治家などを批判するのに「何言ってんだあのピョンシンは!」みたいな書き方をしてるのを何度も見たことがある。日本でも言う人はいるかもしれないけど、まず言った本人が白い目で見られて終わりだと思う。なので本物の身体障害者だったら言わずもがな、きっとすごい偏見を受けてるのではと想像できる。死なれると保険金が面倒だから身体障害者に、という発想が冷酷なんだけど、多分そんなわけで、韓国では障害者になる方がずっとずっと残酷で、それこそ「死んだ方がまし」なんだと思う。
そして母親に捨てられたという過去のせい(最近トラウマという言葉が安すぎて使いたくない)で、女そのものを憎んでいるので、乳房という女・母親の象徴を丸出しにした絵に毎日ナイフを投げている。毎朝の夢精シーンを見るに、多分女も知らないんだと思う。だからそんな様が不憫で、思わず「手を貸した」(プッ)母親と名乗る女が、その後に嫌悪感を出して手を洗うシーンが印象的。
尺の関係はありつつも、あんなに罵ってたのにいきなりオンマと呼んで手を繋ぎ街を歩き出したのにはちょっと面食らったけど、母親を追って負債者を訪ねるうちに、思いがけず巡礼の旅をし、自分のもたらした結果を見ることになる。でも冷酷な人間が大抵そうであるように、ガンドも心から悔いている様子はないし、本当に赦しを請うのは、やはり「自分が同じ立場になって初めて」という業。そんなガンドに私は同情も憐れみも感じなかったけど、「あんたを引きずり回して八つ裂きにしてやりたい」と言った女が望みが叶ったとわかった時どんな気持ちなのか、それがすごく気になる。
それにしても、手編みのセーターを「俺のか」と触る手をはねのけられたり、そのセーターにこだわって、死体から脱がせて着たり。そして冒頭の何なのかわからない内臓がタイルに散らばっていて、後から鶏のものだとわかる脱力感とか、母親と名乗る女を後ろから突き飛ばそうとして未遂に終わった老女とか。うまい映画かどうかは、この手の一見無駄なシーンにかかっていて、こういうのをくだらないと切り捨てるか、醍醐味ととるかは、結局観る者の感性や好き嫌いに左右されるんだろうなと思った一本。←ねたばれ終わり
それにしても、韓国の優れた映画では必ずと言って良いほど借金や貧困、これでもかの暴力が描かれるんだけど、本当に今もあんななんだろうか。あのうさぎを飼ってた老婆の家とか、夫婦が住んでたビニールハウスの家とか。30年前の日本には、ああいう家がまだあった。日本もまだまだ貧しかった。ソウルの街から少し行った所にあの光景が広がっているのだったら、それこそ「病巣」という言葉が似合うような、すさまじいものがあるなと思った。



終戦のエンペラー ★★★★☆
2013年8月劇場鑑賞映画_a0031041_162449.jpgちょっと前、日曜朝の「ボクらの時代」で桃井かおりと菊池凛子、奈良橋陽子が対談していて、この奈良橋さんが「終戦のエンペラー」のプロデューサー。そしてここ10年ぐらいの日本を舞台にしたハリウッド映画のキャスティングなどを手がけている。日本のイメージを変えるのにかなり貢献しているのではないだろうか。
ミニコラムで書いた事件があった後だったので、映画に集中できるか、気分良く観れるか心配したし、賛否両論になりやすいタイプの映画だと重々承知しつつ、私はかなり面白かった。昭和天皇を描いた映画と言えば、ロシアの珍映画「太陽」があった(そういえばあれにも桃井かおりが出てたな)。天皇の釦を留めるのに、ふるふるしながら大汗をかく男も、「あ、そう」も爆笑ものだったけど、ハリウッドがここまできちんと天皇を描くとは。目的が自己弁護だとしても、日本では畏れ多くて作れないもの。
物語はジャック・・・いや、シワシワが増したマシュー・フォックスと、初音映莉子の恋愛を軸に描かれるので、この辺りに引っかかる人が多いようだ。初音映莉子って「ノルウェイの森」のレイコさんだね!と思って観に行って、あれ、なんか変・・・あ、ハツミさんの方かと思ったのは私だw
ねたばれ→元になった本があるようだし、史実にあわせて・・・なんて言い出したらきりがないのだろうけど、ずっと眼鏡や手袋などの一部だけで、最後まで顔を出さずに終わるのではないだろうかと思った「天皇ヒロヒト」が顔を見せ、「責任は私にある」と言った時の感動は、やはり日本人の血だと感じた。まあ、この辺りも検索すると喧々諤々の議論がなされていて、ほんと難しいタイプの映画だと思うんだけど・・・。
でもオバマ大統領が今上天皇の前で90度のお辞儀をしてニュースになった頃、この映画のラストにも出てきた、天皇とマッカーサーの写真が韓国で話題となり、「腰に手をあててリラックスしたマッカーサー、隣りで緊張し、憔悴しきった顔で写った天皇の写真。初めて見た日本人も多く、衝撃を受けている」という記事を読んだことがある。そんなわけはないし、あの身長差ながら、天皇は堂々とし気品すら漂わせ、逆にマッカーサーのポーズが粗野に見えるほどではないだろうか。←ねたばれ終わり
とにかく、うーむ、支持する人の方が少ないようだけど、私はこの映画に素直に感動したし、日本人キャスト陣の頑張りも見てて清々しかったし、良かったですよ、うん。何かもっと書きたいことはたくさんあったんだけど、一週間経ったら忘れてしまって悔しい。
by bigblue909 | 2013-08-16 21:48 | 映画
line

ビッグブルーの本気な無駄話。


by bigblue909
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite