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イルカが愛を確かめにくる、青い海の底の日常生活

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「神曲」 ダンテ著

久しぶりに本の感想などを。
この「神曲」は、私の永遠のカリスマ映画「セブン」でも引用してたもので、それ以来ずっと読みたいと思っていたもの。でもこの本をパラパラした人ならばわかると思うけど、本文よりも解説の方がずっと多く、文章自体も物語というよりは詩に近く、容易に手を出そうという気にはならない。
今回やっと読むことにこぎつけたものの、「面白いか面白くないか」と言われたらやっぱり面白くないし、700年前(!)当時のイタリアの時代背景がわからないと理解できない文章もたくさんある。また、聖書、ギリシャ神話、世界史などから引用したものもかなり多く、この辺りは訳註を読めば理解はできるものの、実際のところおせっかいな解釈も多く、耳元で不要な知識をわんわんわめかれてるような気分になるので読む気にならない。
しかもウィキペディアを読むと、文章はほとんど芸術的な規則性をもっているらしく、恐れ入りました・・・という気分になって、結果、やっぱり私には高嶺の花の本だったみたいだ。
しかしさらに検索をかけたら英語版を訳してみたというつわものさん発見。文章に詩的さはないものの、こっちの方が全然読みやすい。なんでしょう、人間の脳みその出来不出来というものを痛感したヒトコマ・・・(遠い目)
そしてさらに、「知っていますか」シリーズでお馴染みの阿刀田高氏が、「やさしいダンテ<神曲>」を出したそうで。

本は地獄篇、煉獄篇、天国篇の3部から成る。
地獄は軽い罪から大まかに、キリスト教を信仰しなかったもの→愛欲、貪食、貯蓄者と浪費者、憤怒者→自殺者、他者への暴力→誘拐、聖物売買、汚職、偽善、盗賊、欺瞞、不和作為、偽造者→そして最も重い罪が同族・祖国・主人への反逆者となっている。
煉獄は「セブン」風に書くと、罪が重いものから、高慢、嫉妬、憤怒、怠慢、大食、強欲、肉欲となり、罪をこの順に克服したものが天国へと向う。
天国は、地球から月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星、恒星、原動天、最終地・至高天へと向う。
地獄で苦しむ人のなかには「魔術師」なんてのもあり(現代風に言うと占い師みたいなものか)、当時のイタリアではこんな人も裁きの対象だったのかと思うと面白い。また、キリストを信じない者があてもなく地獄の辺境にいるのだけど、「とにかく信じる者は救われる」という排他的・盲目的なものが犯してきた罪のことを考えると、なんとなく、ふっと鼻で笑ってしまう感もある。

でも思ったんだけど、現世は現世などというものではなく、煉獄そのものではなかろうか。人の弱みをみつけてはあげつらい自分への自信とすりかえ(高慢)、他人の幸福を妬み(嫉妬)、些細なことに腹を立て(憤怒)、とにかく楽に生きる方へばかり選択し(怠慢)、美食に走り大酒を食らい(大食)、不必要な物で身を飾り立て(強欲)、目にするのも恥ずかしいようなピンク商売に溢れる(肉欲)この世の中、どこを見ても醜いものばかり。
わが身を振り返ると、生まれつき大食に関してはほとんど興味がないし、いまさら肉欲なんてもあったら怖い。嫉妬も少ない人間だと自分では思う。あとで必ずわが身に返ってくることを知ったから、楽なことばかり選ぶのもやめた。物に執着する無意味さも最近やっとわかり始めた。そんなことを思っていても人から見たら、なに言ってんだって鼻でピーナツを飛ばされるかもしれない。
そして自覚症状ありありなのはやはり高慢と憤怒だろうか。多分もう上の数行を書いてる時点で高慢なのだ(笑) どうしたら綺麗な人間になれるんだろう、そうやっていろんな本のページをめくって日は過ぎていってしまうのかも。

とにかく、あとミルトンの「失楽園」とヒトラーの「我が総統」を図書館で借りて読んだら、私もミルズとサマセットのブラックリスト入りしたりして。
by bigblue909 | 2008-06-01 13:39 | 読書感想
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ビッグブルーの本気な無駄話。


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